○結論
児童の疾走能力を高めるために,もも下げトレーニングをすることで,50mを速く走るようになれる可能性があります.
○研究の背景
これまでの研究では,一流アスリートの走る動作についての多く行われてきました.それに伴って速く走るための動作として,有効な動作が少しずつ分かってきました.
伊藤ら(1994)は,股関節の伸展速度や脚全体の伸展速度が重要であることを指摘しています.また,土江(2008)は,接地脚の膝・足関節を固定することが重要であると報告しています.
このようなトップアスリートや競技選手のデータから得られた知見などを小学生にそのまま教えることは難しいと考えられます.これらのことから,この研究では,競技レベルで得られた知見を児童にわかりやすい形で行えるトレーニング方法について発見しようとした研究です.
○研究の内容
この研究では,小学六年生56 名のデータを分析した結果から得られた知見をまとめています.トレーニングの成果については,最初に50mのタイムを計測しておき,2週間トレーニングを行った後に,再度50mのタイムを計測して,トレーニングの効果を検証しました.
トレーニング内容
○研究の成果
もも下げトレーニングを2週間行うことで,50mタイムは平均で0.21秒も向上していました.また,30mのタイムは,平均0.11秒向上していました.
振り下ろし速度の改善
もも下げトレーニングを2週間行うことでタイムが向上した理由の1つとして,ももを振り下ろす速度が向上したことが考えられます.ももを素早く振り下ろすことで,素早く脚が地面を捉えることができるようになったと考えられます.
接地位置の改善
基本的に走る動作において,自分の体よりも大きく前に接地してしまうことで,進みたい方向と反対側へのブレーキ成分が増加してしまいます.また,川本(2009)は,体の真下で接地することによって地面からの反発は真上に大きく返ってくると報告しています.これらのことから,身体の真下に近い位置に接地することで,地面からの反発は上方向に向き、ブレーキ成分が減少すると考えられます.この研究では,脚を真下に振り下ろすトレーニングを実施しました.その結果,より体に近い位置で接地することができるようになったことで,重心がスムーズに水平方向へと進んでいったことがタイム改善につながったと考えられました.
○まとめ
児童の疾走能力を高めるために,もも下げトレーニングをすることで,50mを速く走るようになれる可能性があります.
この文献が気になった方は以下にリンクを用意しておりますので,ぜひご覧ください.
参考文献
・伊藤章・斉藤昌久・佐川和則・加藤謙一・森田正利・小木曽一之(1994) 世界一流スプリンターの技術分析,日本陸上競技連盟強化本部バイオメカニクス研究班(編) 世界一流競技者の技術(第3回世界陸上競技選手権大会バイオメカニクス研究班報告書),31-49, ベースボールマガジン社,東京.
・土江寛裕(2008)スプリント走の角局面に影響をおよぼす体力と技術,陸上競技研究第75号,No4
コメント