短距離選手と跳躍選手で成功するためには、生まれ月が関係するのか?

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相対年齢効果

日本の学校では、4月に入学するという特徴があります。これによって、同学年の中でも、誕生日をはやく迎える人(4月生まれ)と遅く迎える人(3月生まれ)がいます。このように誕生日をはやく迎える人は、遅く迎える人と比較して、相対年齢が高くということができます。

一般的には、相対年齢が高い人ほど体格が優れており、体力テストの成績が良い傾向があるといわれています(大西、1959; Nakata et al., 2017;渡邊と田村,2017;橋詰ら,2021)。

このように、同学年の中においても、相対年齢の違いにより発育発達や活躍の機会に差が生じる現象を相対年齢効果といいます。

世界陸上・オリンピック陸上競技日本代表選手に相対年齢効果は存在する

今回、紹介する研究報告は、「世界陸上・オリンピック陸上競技日本代表選手に相対年齢効果は存在する」というものです。以下に、論文のリンクを貼っておきますので、興味のある方はご一読ください。https://www.jstage.jst.go.jp/article/hatsuhatsu/2023/95/2023_18/_article/-char/ja

結論から言うと、世界陸上とオリンピックのシニア世代における陸上競技日本代表選手(男子短距離選手・跳躍選手)には相対年齢効果が確認されたというものでした。

短距離種目は、体格が競技成績に影響するため、4月から9月生まれの選手が多く、1月から3月生まれの選手が少なかったそうです。その一方、跳躍選手は、早生まれの選手の割合が高いという傾向がありました。

次項から、もう少し詳しくみていきたいと思います。

タレントトランスファーガイド

日本陸上競技連盟は、2018年に開催された全国大会出場者を対象に、誕生月の偏りを示しています(タレントトランスファーガイド)。ジュニア・ユース期では、4月〜6月生まれの者の割合が多く、1〜3月生まれの者の割合が少ないことが報告されています。

この調査では、日本代表選手では相対年齢効果がみられないという報告がされていました。これは、この調査の対象者が中長距離(49%)、短距離(29%)、跳躍(16%)、投擲(8%)、混成(3%)と種目別の偏りがあるためだと考えられています。

小中学生を指導されている方であれば感じることもあると思いますが、ジュニア期の同学年における4月生まれと3月生まれの体格の差は非常に大きいと感じます。特に、小学生においては、体格の差がパフォーマンスに直結している場面に出会うことも少なくないと感じます。

短距離選手と跳躍選手

短距離日本代表選手に、4月から9月生まれの選手が多く、1月から3月生まれの選手が少なかった理由としては、以下の点が考えられています。短距離種目では、体格が大きい者が有利な種目であり(Sedeaud et al., 2014)、学年度前半に生まれた選手が、ジュニア・ユース期に良い競技成績を残したことが、結果的に短距離種目の継続につながったと考えられています。

一方、跳躍選手においては、1月〜3月生まれの選手が多かったそうです。これは、若年期に短距離種目をドロップアウトした選手が種目転向を経て跳躍選手を選択したか可能性があると考えられています。

本記事の題名でもある、「短距離選手と跳躍選手で成功するためには、生まれ月が関係するのか?」というのは、現状分析の結果から言えば、生まれ月は関係する可能性があると考えられます。

ジュニア・ユース期のドロップアウト

日本陸連が推奨している通り、小学生や中学生においては、1つの競技や種目に特化せず、様々な種目や他のスポーツを経験し、高校生以降に最適種目を絞り込むことが大切だと感じます。早期に、競技結果にばかり目を向けてしまうと、競技を継続することが難しくなってしまうと思います。

それと同時に、中学生などで陸上競技に取り組んでいる人には、あらゆることに挑戦してほしいと思います。自分に向いていることを見つけることがとても大切になってきます。そういった視点からの育成も大切にしていきたいですね。

参考文献

・大西義男(1959)小学校から高等学校に至る月別の発育体力について,体育学研究,4(1),148
・Nakata H. Akido, M. Naruse, K. Fujiwara, M (2017) Relative Age Effect in Physical Fitness Among Elementary and Junior High School Students, Percept Mot Skills, 124(5), 900-911
・渡邊將司,田村真理子(2017)早生まれで体力が高い子どもの特徴,発育発達研究,74,1-8
・橋詰ゆり,牧野ユリアン,長津恒輝,土屋亮太,鈴木健,杉山康司(2021)小学生の体力テストからみる生まれ期およびスポーツ活動が及ぼす体力差,教科開発論集,9,89-98
・日本陸上競技連盟 タレントトランスファーガイド.https://www.jaaf.or.jp/development/ttmguide/ (2024年6月27日アクセス)
・Sedeaud, A. Marc, A. Marck, A. Dor, F. Schipman, J. Dorsey, M, Haida, A. Berthelot, G. Toussaint. J (2014) BMI, a performance parameter for speed improvement, PLOS ONE, 9(2), e90183

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