○研究の背景
これまでの研究では,ピッチやストライドに影響する要素について様々な研究が行われています.しかし,ピッチやストライドというのは,身長や筋力などに大きく影響を受けると考えられます.これまでの研究では,ピッチやストライドの違う選手を比較した場合,その違いが技術的な要素による影響であるのか,身体的な特性によるものであるのかについては分かってはいなかった.
そこで,この研究では,同じ人の中でピッチとストライドが変化した要因を明らかにすることを目的としているようです!
○研究の内容
この研究の対象者は,陸上競技の男子短距離選手1名でした.実験の内容は,対象者に,スタンディングスタートから60m全力走をタータンの上で行わせた.
○研究の成果
成果1
個人内での比較的ピッチが高い走りと比較的ストライドが大きい走りでは,走る速さは同程度であったことが分かりました.しかし,ピッチが高いときとストライドが高いときの異なる特徴がみられました.その特徴としては,支持時間(接地している時間)が同じぐらいでしたが,ストライドが大きい走りでは,滞空時間が長いことが分かりました.
成果2
地面反力(地面に加えた力)の最大値と,力積(加えた力×時間)は水平成分には差がなかったが,鉛直(上)方向成分は,ストライドが大きな走りのほうが大きかったそうです.
成果3
ストライドが大きい時の走りの特徴としては,接地足の膝が体よりも前方に位置した状態で接地していることが分かりました.膝が体よりも前にある状態で接地すると,接地位置が体よりも大きく前に位置してしまう.しかし,この研究では,ストライドが大きい人は,膝が体よりも前に位置した状態で接地していたが,膝関節を比較的大きく曲げることで体から近い位置に接地していたと考えられる.また,ピッチタイプの人よりも接地の際に体が直立していたという結果でした.
上記の状態で走ることで,ストライドが大きい時の走りでは,接地の際に大腿角度が大きい状態(接地の際に膝がより前方向に引き出されている状態)になっていました.
○練習への活かし方
ストライドが大きくしたいからといって,腰を高い位置に保とうとすると,ピッチが過剰に高くなる走りになってしまう可能性があるということです.これは,今まで言われてきた指導に疑問を呈する内容になっているように感じます.
これから指導をする人や,選手の方々は,体の近くに接地するにしても,接地のときの姿勢によってピッチやストライドが大きく変わるということを頭に入れて技術練習に取り組むように意識してみてください!
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