おすすめの理由
この本は,生きていく中で誰もが抱え込んでいるジレンマや閉塞感,息苦しさや煩わしさを描いた作品です.その中でも鮮烈な印象を残すのは,そこで生活している人々の生き様の描写が鮮烈であると絶賛されています.5 つの短編集の繋がり方が非常に考え込まれており,読了後は非常に幸せな気持ちになります.文学の素晴らしさとは,こういったものであると改めて気づくことができました.
個人的には,この本を読み進めていくなかで,息苦しさを感じました.物語は,現代社会における非常に暗い部分をテーマとして書かれています.登場人物の境遇について考え出してしまうと本当に気持ちが落ちてしまいます.ただ,この作品には,ちらほらと希望が垣間見える瞬間が存在します.暗いテーマであることで,一筋の希望が対比して非常に明るく感じます.私自身は,この希望の部分が心に残っており,最後には素晴らしい作品と出会えたと感じることができました.少し暗い気持ちになってしまいますが,決して目をそらしていけないことを改めて実感できる作品となっています.どのような年代の方々にも,一度は読んでいただきたいと感じました.
著者
町田その子
彼女は,福岡県福岡県育ちです.2016年には,「カメルーンの青い魚」で新潮社が主催する第15回女による女のためのR-18文学賞の大賞を受賞しました.2021年には,「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞しました.本作に「カメルーンの青い魚」も書かれています.
内容・構成
思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋,そして,ともには生きられなかったあの人のこと――.大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」.すり鉢状の小さな街で,理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した,どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集.
1.カメルーンの青い魚
2.夜空に泳ぐチョコレートグラミー
3.波間に浮かぶイエロー
4.溺れるスイミー
5.海になる
コメント